【通貨の匿名性に課税する方法、あるいは負の消費税について】

前に書いた、電子通貨の導入手順http://d.hatena.ne.jp/su_rusumi/20091207が、実は、「通貨の匿名性に課税する」方法だということに、気づいた。

つまり、
◆消費税を10%増税する
◆電子通貨決済の場合、10%のポイントを割り戻す

これだと、現金決済だけに課税される。ということは、半自動的に、法人は電子通貨決済が義務付けられる。領収書の査定も検索で一瞬で済む。現金決済の割合が多ければ、それだけで、「怪しい企業」「怪しい人物」確定だ。これで増税対象になるのは、「通貨の匿名性」に依存するプレーヤーだ。

貨幣の機能は、教科書的には、

・価値の保存
・価値の運搬
・価値の尺度
・価値の媒介

と4つある訳だが、貨幣の機能には、実は、もうひとつ追加するべきだと思う。「価値の匿名化」だ。お金には名札がついていないが故に便利だ。貨幣は、使用するに際して入手先を説明する必要がない点が便利だ。タックスヘイブンは、価値の匿名性を高めるが故に、その筋の人間に、愛される。

言い換えるなら、ロンダリングというのは、古典的な通貨の持つ、本質的な機能》だ。その意味で、電子通貨には、その筋の人から見れば、望ましくない欠陥がある。グレーなことが出来なくなる、という欠陥が。

もし、上記の「通貨の匿名性に課税する」が実現した場合、どうなるか? 課税対象の「価値の匿名化」を欲するプレイヤーは、どう行動するか?

地下経済は、最強の匿名通貨である金の地金で決済されるようになるだろう。現金を使っただけで足がつくので。
・ただし金の地金は、ニセ札に比べて偽造が比較的容易なので、信頼性が薄い。
・「匿名」の供給先が、《創造》される予感がする。たとえば、宗教法人や架空法人、或いは「寄付を媒介とした価値交換スキーム」など。
・プライバシーの管理体制が、利害関係を有する文化人や政治家によって問題化され、大々的にキャンペーンされるだろう。泥仕合は、事態の推移を左右する重要な要素だ。
・残念ながら、電子通貨は、政治的な理由に妨害されて、最適化されないだろう。地デジが地上波テレビ局によって複雑化したのと同じ構造。
・納税者番号制度が必須だ。個人だけでなく、法人や政治団体にも。…これは抵抗が大きい。なにせ、政党の幹部が、政党助成金で自分名義の土地を買ってるぐらいグレーだから。

さて、本題に入る。

個人的には、ポイントバック、割戻し率を増やして、『消費税を増税しつつ《負の消費税》を実現』して欲しい。なぜなら、日本経済のボトルネックは消費であり、単なる消費税の増税では、日本の経済は活性化しないからだ。
現状の税制改革の方向性、つまり、消費税を増税する一方で、住宅や土地や自動車などの特定商品に、税控除や補助金を増やすという方向は、公正さに欠けると思う。業界圧力の強い業種だけが、そのつど、税制で有利になるというのは、レントシーキングだ。2010年現在、多くの自動車には、補助金によって「期間限定の負の消費税」が実現しているが、食品や薬には5%の税金がかかる。これは不公正だ。住宅は控除が大きいが、税控除は高額所得者に有利な例外ルールであり、負の累進課税で資産形成を促しているようなものだ。資産形成への税幇助は、現状の、消費不足&資産過剰である日本経済への処方箋としては間違った方向性だ。現行の、例外の多い税制は、消費促進に向けた方向性で、整理する必要がある。

去年考えた、【突然ですが、消費を刺激すべく、抜本的な税制改革を妄想してみた】http://d.hatena.ne.jp/su_rusumi/20090322/1237726374とは、かなり齟齬があるので、いずれ、統合したい。法人税と土地税制と特別会計と年金に関する考察が、ゴッソリと抜けているので、煮詰めなければ…。って、出来るんかいな? 

マイナスの消費税についての、プチ考察はこちら【私がエコポイントに見た、《マイナスの消費税》の幻影】http://d.hatena.ne.jp/su_rusumi/20090619