【本日アナログ放送終了;あるいはテレビとスポーツの関係】

今となっては、それがいつ頃だったか思い出せないが、大体2年くらい前、アナログ放送の終了が、2011年夏になると決まった時、もっと、大変なことになる、と感じていた。なにしろ、既存のテレビが全て一斉にゴミになるのだから。地デジはセットアップも面倒だし、チャンネルの反応も悪いし、利権のイヤな臭いがするし、画質が良い以外は、まるでメリットが無かった。
 
だが、実際は、大したことは無かった。
 
この半年で液晶テレビは一気に安くなり、更に悪いことに、番組は、テレビ本体よりも、もっと安っぽくなってしまった。テレビなんて、こうやって、わざわざ、ブログに書くまでもないくらい、どうでも良くなった。
 
10年くらい前は、本当に見たい番組なら、録画して2倍速で見ていたものだが、今は録画する気がおきない。それもゴールデンの民放ほど、録画する価値がない。2ヶ月前に流行ったYoutubeの映像に、雛壇の芸能人がツッコミを入れただけの番組が、堂々とゴールデンで流れている。そのツッコミ自体も、2chねるや、Youtubeのコメント欄より、ずっと甘い。更に、映像の一番盛り上がる瞬間に、CMが入る。テレビのチャンネルを変えるスピードは、ブラウザでタブを切り替えるよりも遅い。もう、民放は見るなと言わんばかりだ。
 
NHKの特番ですら、作りの甘さが透けて見えるようになった。番組の質が大して下がったわけではない。検索一発で、関連記事が大量に読めるようになったからだ。先日もチェルノブイリ関連で、ベラルーシの国家予算の2割が未だに事故対応とか、変なのがあった(たぶん誤訳なのだろう)。特番ではないけれど、大河ドラマなどの歴史関連番組を、Wikipediaを軸に検索しながら見ながら見ると、脚本の強引さに、だんだん腹が立ってくる。

テレビに対して、そんな怒りを抱く時、自分が少しだけ偉くなったような気がするから不思議だ。自分が変わったのでもないし、テレビが変わったのでもない。情報の溢れ方が変わっただけなんだ。

というわけで、今や、絶対に地デジで見ないといけないのは、サッカーとテニスの生放送くらいだ。サッカーとテニスは、割と高画質の恩恵を受けている。サッカーは選手の足元の細かいフェイントが、ちゃんと確認できるようになったし、テニスは芝の跳ね上がりまで見えるようになったし、選手の疲労度がすごく良くわかるようになった。
 
逆に、相撲や野球なんかは、あまり地デジの恩恵を受けていない。もともとズームアップで放送していたので、画質が上がったからといって、プレーの質まで変わって見えるほどのことはなかった。地デジでもボールの縫い目まで見えるわけではないし。
 
不思議だが、野球という球技は、映像が無くてもラジオだけでも結構楽しめる。野球は、基本的は(エラーする時以外は)全部がセットプレーだから、何が起こっているのか、言葉だけで伝えることが出来る。そして、選手が何を考えているのか、今から基本的に何が起こるのかを、元名選手の解説者が、言ってくれる。戦術の解説というか性格分析や予言までしてくれる。『1アウト2、3塁で7番打者なら、1塁が空いているので、ボール臭い球を投げておいて、8番打者と勝負した方がいいんだけど、今は代打に●●が残っているから打者勝負で行くべきです。』とか『ここで左の中継ぎは何人残っているので、』…という感じで、心理から駆け引き、更には長期戦略まで、実況と解説の対話だけで説明できる。勝負の綾を言語化出来る。これはちょっと珍しい競技だ。テレビは見なくなったが、ここ数年は、料理の時のBGMに野球中継を聴いている。だから、私は昔よりカープが好きになった。カープはいつも弱いけど。
 
話をサッカーに戻すが、ゴールデン(午後7時〜9時)がサッカーだらけになれば、それで最高のテレビなのかというと、そんなわけはないことは、昔なつかし、Jリーグバブルの時に証明済みだ。それはどういうメカニズムで、サッカーと地上波テレビは相性が悪いのだろう? 何か、克服する手は無いだろうか?
 
確かに、女子ワールドカップアメリカ戦は朝3時起床に値する、最高の試合だった。逆に言うと、最高の試合なら、ゴールデンである必要が無い。朝4時に視聴率20%を取る力がある。

そして、最高でないサッカーの試合というのは、個体識別できるくらいのファンでない限り、結構見続けるのが辛いものだ。サッカーは集中力を要求するので、2時間はつらい。コパアメリカは、女子ワールドカップより試合のレベルが高いのに、見るのがつらかったし、一昨年の男子代表戦は、国際試合であっても、見ていてキビシイ内容があった。サッカーは感動も大きいが、絶望も深い。放送時間帯はあまり関係無い。というわけで、なでしこリーグが地上波に流れても、Jリーグと同様、視聴率は取れないだろう。

もちろん、制作者側も、それが分かってるから、今のジリ貧状態になっているんだろう。2011年、テレビは、韓国ドラマとK-POPと通販番組だらけである。これを1920×1080の解像度で見ている。15年前の人に言っても、信じないだろうな。