【新装開店したイオンモール広島祇園で、新品のピアノを弾いて遊んだ

 先日、開店したばかりのイオン祇園に行ってみた。今や、日本のちょっとした規模の街なら、どこにでもある、巨大なショッピングモール。n+1個目が開店したわけだ。これが何年か後に、ガラガラになるのかと思うと少し怖い。地元の人間は購買力が無いので、サティとダイソーフタバ図書以外のテナントは、数年で撤退の危機に立たされるだろう。フタバ書店は通路が広くていいな。イスもあって立ち読みが便利そうだ。ただ本の品揃えは同じフタバ図書でも、メガの方がありそう。
 島村楽器のレッスンルームがあったので、空き時間に部屋を借り、30分ほどピアノを弾いてみた。新品のグランドピアノを弾く機会は、たぶん生涯無いだろうから、内心期待したが、すぐにガッカリした。忘れていたが、狭い防音室とグランドピアノは、相性が悪いのだった。残念ながらピアニシモで弾いても部屋が響きすぎる。
 DIAPASONというメーカーは初耳で、当然初めて触るメーカーだった。とにかくタッチが重い。4万円のsp-250もたいがい重い部類けど、それ以上だ。レンタルを1時間にしなくて良かった。鍵盤は(ローランドの一部のデジピほどではないにしろ)少し浅い目かなと思ったけど、これは5分で気にならなくなった。音質は、部屋が狭くてピアノが大きいので全然分からない。天蓋も閉まっているし。新品だから調律は正しいはずだけど、全く分からない。アナログピアノの醍醐味である、デジタルピアノでは絶対出せない、小さな音で速くパラっと弾いたときの、筐体全体から包み込むようなフワっとした澄んだ響きが潰されている。部屋が長方形なのも音響的には良くない(平行面を作ってはいけない)。これならデジタルピアノの方が快適だ。こんな過酷な環境でレッスンする生徒さんと先生には少し同情する。特に小さな子供さんは、鍵盤が重くて(少し長い曲だと)家のピアノで弾けた通りに弾けないだろう。音大を目指す若者には良い筋トレになるのかもしれないが、安佐南に、そんなエリートさんは何人居るだろうか(←2010年;世界レベルのピアニスト;萩原麻未さんが、安佐南から出た! 私は己の不明と暴言を深く恥じ入る)。
 ところで、島村楽器は床面積の割りに、妙に店員が多かった。5,6人はいたと思う。それも男性店員ばかり。たぶん開店のスタートダッシュにあわせて、別の店から出張援軍が来ていたのだろう。この規模の店舗でこの店員数は維持できないはずだ。
 レンタル時間が終わり、比較と称して、店のピアノを少し触らせてもらう。空間が広いが故に、店のアップライトの方が、レッスンルームのグランドピアノより響きが気持ちよくて、止められない。私は、響きに餓えていたんだなぁと後から思った。自分に酔ったイタい客になり果てて、我に返るまで10分くらい自分の世界に入る(音楽って、本来、そういうイタいもんだよね)。左手は小学生レベルの腕前だけど、右手4声でメロディラインを連打し、適当に対斜を使いながら、時々5拍子のフレーズを混ぜていれば、なんとか周囲の目は、ごまかせるのさ。
 店頭の数台を弾いたが、アップライトのDIAPASONは、落ち付いた、変な力みの無い音だった(タッチもグランドピアノほどは重くない)。あのくらいキレイな響きなら、一人カラオケの感覚で、毎週通ってもいいのだけど。近所だし。

 さて、店舗を出て、暗い夜空を見上げながら考えた。これだけ空母のごとく巨大な新店舗なのに、印象はというと「平凡」の一語。「この店でなければ買えないスゴイ品」というものが、…まるで無い。ビレッジバンガードをしつこく見ればあったのかもしれないけど、全体では開店初めから検索に負けている。皆それを知ってる上で、大規模に投資し、簡単に店を建てている。これは少々、恐ろしい現実ではないだろうか?