【私がエコポイントに見た、《マイナスの消費税》の幻影】

何度も言うが、消費が経済のボトルネックなのに、消費税を増税するのは、根本的に間違っていると私は思う。経済を回すには、ボトルネックである消費を刺激する必要がある。貯蓄が損になり、消費が得になる方向で、税制は改正されるべきだ。

そこで、今回のエコポイントだ。これを一種の《マイナスの消費税》と見立ててみる。以下空想だが、もしエコポイントを全ての商品に包括的に導入してみよう。服だろうが、本だろうが、食品だろうが、携帯の電話代だろうが、すべての消費にポイント(期限付き)が付く。消費は刺激されるし、消費税の逆進性がマイナスになって、低所得者(高消費比率者)ほど恩恵が大きい。経済構造の観点から言って、かなり理想的な景気刺激になるのではないだろうか? 少なくとも道路や橋を作るより良い。

ただし、今回のエコポイントのような、耐久消費財限定ではダメだ。なぜなら、これは貯蓄した者勝ち、「今まで我慢したもの勝ち」だからだ。たとえば今回の景気刺激策で、製造13年以上前の車の買い替えには、25万円の補助金を出すのだが、13年も日本経済に貢献してこなかった消費者に、25万円の追い銭を出すのはおかしい。彼らは放っておいても近い将来に買い替えるから意味が無い。いつか経済対策が出るまで、気長に待てるだけの体力のある消費者だけが、得をする。

《マイナスの消費税》は、包括的であり、恒久的でなければならない。一時的で、耐久消費財限定では、一時的な刺激にしかならない。経済の歯車は回らないのだ。今回の臨時の経済対策は、ある意味、《「臨時でない時」の買い控え》を奨励しているようなものだ。去年エアコンや車を買い換えた人は、「あと1年待てばよかった」と学習するだろう。次の補助金は、太陽電池燃料電池屋上緑化だろうが、恩恵を蒙るのは持ち家限定であり、そのコストは賃貸家庭を含めた全員で負担するのである。

《マイナスの消費税》の最大の泣き所は、手続きの煩雑さと事務コストにある。だから現状、車や家電や太陽電池、住宅ローンや新築住宅建設などの高額商品(耐久消費財)にしか、マイナスの消費税は導入されていない。だが本質は、事務手続きそのものではなく、事務手続きを導入するに際の、政治的コストの、絶望的な高さだ。技術的には、ヨドバシカメラでも出来ることだが、国家公務員I種の英才が集まる日本政府には、不可能だ。瀬戸大橋3本より難しいと思うな。

納税者番号制度と、ポイント割戻しをIT処理しないかぎり、「包括的な《マイナスの消費税》」は導入出来ない(というか各種の補助金を、マイナスの消費税などと、恒久的な税制の一環として考える政治家は居ないだろう)。もちろん、日本経済は消費に餓えている。その飢えは深刻だ。だから今後も、さまざまな補助金の形で、《マイナスの消費税》の幻影は出てくるはずだ。しかしそれは、あくまで限られた商品の、臨時なもの、視野の狭いものに終わるだろう。つまり脈絡の無い特需が、あちこちで散発的な形で垂れ流されるのである。これは、業界にとって麻薬のようなもので、5〜10年置きに、エコポイントもどきが復活すると予言しておく。既に住宅業界などは、そういう状況になっている。補助金だの、ローン減税だの、控除枠の拡大だの、といった臨時の優遇措置が数年置きに垂れ流されて、訳が分からなくなっている。

今夜の空想は、これで終わり。