【データ分析会社、競馬で160億円脱税】

…久しぶりにブログでも書くとしよう。

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091009AT3K0900C09102009.html


絨毯爆撃。こと金融に関して、アングロサクソンはやることが違うな。自動車メーカーだろうが、ブランド商品だろうが、倒産案件だろうが、通貨だろうが、何でも金融商品に翻訳してしまう。

3年で160億の利益ということは、毎週1億か。回収率110%の成績としたら、毎週10億円の馬券を買い、11億円払い戻ししていたことになる。土曜5億、日曜5億。相当オッズを動かしていたはずだ。

ネット投票は、1口座20万円かそこらが限界なので、大量の偽名義口座が必要になるから、難しいのではないかと思う。だがWINSや競馬場で実馬券を買っていたとなると、発券作業だけで何人かアルバイトを雇うことになるだろうか。全組み合わせを買っていたそうだから、WINSの近所のワンルームを借り切って、買い目をオッズ対応した金額に割り振りをして、マークシートのプリントアウトはプログラムを書いて処理しないと、締め切りに間に合わなくなる。こうなると、馬券を的中させるより、機密保持の方が難しいだろう。
結局、税務当局に足がついたということは、ネット投票していたということか。

今回の脱税案件の教訓、ないし影響は以下

(1)…統計を駆使すれば、競馬は勝てる。そう考える人間が、この件を通じて、たくさん出る。
(2)…犯人は今後も海外から、知人経由なりで馬券を買っている可能性は高い。
(3)…税務当局は、大口黒字のネット口座を監視している可能性が高い。
(4)…だから、次世代の勝ち組は、ネット口座を使わなくなるだろう。
(5)…「勝てるのは、ごく一部の数学が出来るヤツだけ」という知識が流布すると、競馬の平均的な参加者のモチベーションは毀損する。だから、JRAから見て、この種のニュースは、大きく扱われたくない。
(6)…JRAは大口の広告主である。(4)と(5)から、今後、同様の脱税事件は、あまり表ざたにならず、大げさに報道されない可能性が高い。
(7)…今回の事件は伝説となり、「160億円稼いだプログラムを極秘入手しました」という詐欺が横行する。
(8)…英語が母語な人間は、海外に逃げれば良いんだから、何かと便利だよな。

◆◆◆◆◆◆◆◆

ちなみに、私も競馬は好きで、統計戦に手を付けたことはあります。あると言っても、TARGETfrontierJVという統合ソフトが競馬界のデファクトスタンダードだから、誰でも出来ることですが。厩舎の穴馬の傾向を辞書にまとめ、辞書を蓄積して、出馬表の中から、辞書とマッチする馬をピックアップして.TXTに出力する素朴なスクリプトでした。思いついたのは10分ですが、素人だからPerlで1週間格闘です。これで複勝1000円級の馬が拾えるぜと意気込んだのですが、ダメでしたね。1年回して、回収率50%を割る散々な結果に終わったので(笑)塩漬けです。今は、昔ながらの目測格付けで小額で楽しく競馬をしています。

それから、なぜイギリス人が、イギリス競馬ではなく日本の競馬に手を付けたかといえば、日本の競馬は世界で一番細かくデータをデジタルで公開しているからです。これは、組織力でデータを自力サンプリングすることができる組織(たとえば893さん)対策でした。ごく一部の勝ち組を作らないために、誰でも統計戦が仕掛けられる環境が、日本の競馬界では整えられているのです。
更に、統計が苦手な人のために、JRA-VANデータマイニングを長年をやっていて、有料ですが低額で公開しています。一度試してみたのですが、仮説や前提を自分で組み立てていないせいか、はたして自分が正しい考え方をしているのか、手ごたえが無いんですよね。JRA-VANのデータマイナー部隊のインタビュー記事が読んでみたいのですが、上記の(6)のとおり、この脱税案件は、JRAから見て表ざたにしたくない部類の動機があるので、不可でしょう。

ただ、税務当局が押収したプログラムを、JRA-VANが入手して解析し、それが黙って公開される可能性はあります。競馬の脱税摘発に協力するという名目で、税務当局と協力関係を確立するのです。どうせ税務当局では、プログラムを解析できませんからね。なんだか真保裕一あたりなら、小説が1本書けそうな話です。